この春、玄には、村長後継候補のタカトラをはじめ、3匹のムスコたちができました。
けれども、実は、玄が将来、彼らといっしょにシカを追いかけることはありません。
タカトラ
駆除や猟のときには犬を完全にフリーにするし、獲物を見つければ犬も激しい興奮状態になるので、未去勢のオスどうしをいっしょに放して使うことは、致命的な喧嘩になるリスクが高くて、とてもできません。(犬舎からも、柴犬の父と息子は敵同士のようなものだ、と言われました・・・)
そうした中で、9月にはもう8歳になる玄の、狩猟犬としての後継を、どうやってできるだけ早く確保し育成するか、私たちはずいぶん悩みました。今後、交配を繰り返したとしても、またオスだけが生まれる可能性も、論理的にはあったからです。
それより外からメスの子犬を購入し、玄といっしょに使いながら後継として育て、数年後にその犬が一人前になって玄も引退したら、その時にタカトラと交配する(玄の孫を取る)ことで、隔世にはなるけれども、狩猟犬としての玄の血筋と能力をつないでいくことができるのではないか。
そのほうが早いし確実だ(玄が引退していれば、孫の代はオスでもメスでも良いので)、という意見が多かったです。
しかし、自分(玄父)と玄とその直子(玄子)の3代がそろっていっしょにシカを追いたい、追わなければいけないんだ、というKJの思いは強く、誰にも動かし難く、私たちは、もう一度、玄の交配にチャレンジすることに決めました。
そうして彼女は留寿都に来ました。加我の時女(トキメ)号です。
※既に妊娠してからの画像です(以下同じ)
トキメはプロの現役繁殖犬です。それを発情から出産、生まれた子犬の離乳まで、4か月間もの長期にわたって貸し出すのは、加我荘としても前例の無いことでしたが、何年にもわたる私たちの挑戦を知ってくれている加我さんが、望ましい配合やさまざまなリスクを含めて相当に考えぬいた上で、最後は了解してくれました。
犬舎の犬はペットとは違うから、とあらかじめ言われたとおり、人間と同じ空間で暮らしたことのないトキメは、留寿都に来た当初、家の中であれ車の中であれケージから出ればすぐにオシッコ。テレビを始め見たことのない物や、台所の食器の音など生活音をひどく怖がり、エサもほとんど食べない。それでいて、散歩に歩けば道に落ちているものすべて・・・ミミズも・・・ウンチまで・・・拾い食いしてしまう。という状態で驚かされました。
それでも、散歩中に出会う小鳥や虫を猛ダッシュで追いかけたり、風に舞う木の葉にジャンプして飛びつく姿は、玄との配合で良い子が出るだろうと期待させ、ケージを開けると撫でてほしいと近寄ってくるようにもなり、次第に広い世界、人間との生活にも慣れて、留寿都でのリゾートライフ?を楽しんでくれているようでした。
エサをあまり食べないことが最後まで残った心配でしたが、フードは食べなくてもシカなどの肉は食べていたので、今思えば環境変化のストレスよりも、妊娠の影響だったかもしれません。
トキメは何より気立ての良い子で、吠えず騒がず(ただしこれは、出産後に一変します)、病院でも家でも、人間に何をされても無抵抗。また、玄との相性が良く、トキメの発情中は玄がぴったりケージに寄り添い、散歩も自ら短縮して四角い部屋を丸く掃くように走って戻り、仮想敵である村中のオス犬たちから?ひたすらガードするという、これまで見たことの無い行動をとりました。
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